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本当に東芝だけなのか?

2015年07月20日(月)

日本を代表する会社のひとつである「東芝」が揺れています。

世間では「不適切会計」という用語が使われていますが、代表者の指示もあったようですので、私は完全に「粉飾決算」だと思います。

日本公認会計士協会によると、厳密には「不適切会計」と「粉飾決算」には違いがあるそうですが、そんなことはどうでもよいことです。

現時点で判明しているだけでも、結果として累計3000億円を超える利益が過年度において過大計上されていたようですので、粉飾額は過去最大になる可能性があります。

(ちなみに、過去最大の粉飾額は、破綻した日本長期信用銀行の約3100億円といわれています。)

それ故、株式市場だけでなく、社会全体に与える影響は計り知れないものがあります。

粉飾額は3000億円で終わるのか?

それだけでなく、私は

粉飾しているのは本当に東芝だけなのか?という不安を払拭できません。

粉飾の指示をした同社の代表者は当然退任することになると思いますが、様々な社会的責任が追及されることになるかと思います。

また、デタラメな財務諸表に「適正意見」を表明し続けてきた監査法人にも大きな責任があります。

マスコミ報道では、2012年頃に同社の社外取締役が業績回復の不自然さを指摘していたそうですが、監査法人はそれに気づかなかったのでしょうか?

仮に、気づいていたのに指摘しなかったのであれば、救いようがありません。

逆に、本当に気づかなかったというのであれば、結果として監査人としての役割を果たせなかったことになります。

残念なことですが、監査人の能力に問題があったといわれても仕方がありません。

監査が難しいものであることは、私はよく分かっているつもりです。

特に、現在の会計基準が異常なレベルまで将来の予測や見積もりに影響されるものであり、検証が難しいことも。

そして、伝統的に、会社が本気で隠したものを見つけることは困難であることも。

さらに、監査報酬をいただいているにもかかわらず、会社とは独立性を保持しなければならないことも。

私には荷が重い。

それ故、私は公認会計士ではありますが、20年前から財務諸表監査には関わらないことにしたのです。

財務諸表監査を引き受ける以上は、監査人に結果責任が伴います。

監査法人は訴訟で負けないことを重視するあまり、「監査手続」を実施した過程を残すことを行動原理にしている節があります。

「監査手続」は重大な不正や誤謬がないことを確かめるための手続であって、それ自体が目的ではないのに。

定められた「監査手続」を実施しただけで、財務諸表に重大な不正や誤謬がないことを証明できるのか?を真剣に考えてほしいです。

訴訟で負けなかったとしても、社会からの信頼を失ってしまえば、あっという間に監査制度など崩壊してしまうことを、監査法人は意識しなければなりません。

同社を担当していた監査法人だけでなく、他の監査法人も襟を正す必要があります。

「明日は我が身」ですから。

(追記)

第三者委員会によると、粉飾額は1562億円とのことです。

お詫びして訂正します。

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